今日なすべきことをなせ

 過ぎ去れるを 追うことなかれ。
 いまだ来たらざるを (ねが)うことなかれ。
 過去、そはすでに 捨てられたり。
 未来、そはいまだ (いた)らざるなり。

 されば、ただ現在するところのものを、
 そのところにおいて よく観察すべし。
 揺らぐことなく、動ずることなく、
 そを見きわめ、そを実践すべし。

 ただ今日まさに()すべきことを 熱心になせ。
 たれか明日 死のあることを知らんや。
 まことに、かの死の大軍と、
 ()わずというは、あることなし。

 よく、かくのごとく見きわめたるものは、
 心をこめ、昼夜おこたることなく 実践せん。
 かくのごときを、一夜賢者といい、
 また、心しずまれる者とはいうなり。


   「中部経典『一夜賢者経』増谷文雄・訳」
庭野日敬 師
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合 掌
  

今日なすべきことをなせ
 『ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサは、インドのカルカッタで、住む家もなく、食べるものもない最も貧しい人びとの「母」となって、自分の一生を捧げておられます。

 その奉仕に徹しきる姿を映画に撮った監督の千葉茂樹さんは、「フィルムの編集をしているうちに、しわだらけのおばあちゃんが、これほど美しい人がほかにいるのだろうかと思えるほど美しく見えてきた」と言います。何よりも心をひかれたのは、その後ろ姿だったと言うのです。

 マザー・テレサにみとられ、話を聞いてもらう人たちは、「神は自分のことを愛しておられる」「神は私の言うことに耳を傾けてくださっている」と、はっきり感じるのだそうです。そして、テレサさんの手に抱かれて息を引き取るとき、「私は生まれてきてよかった」というひとことを残していくというのです。

 「死ぬことはこの世から消えてなくなることではなく、その人間が生きていたという事実を証明するものなのだ。死は人間の一生にしめくくりをつけ、その生涯を完成させるものなのだ。消滅ではなく完成だ」と言われたのは作家の山本周五郎さんです。

 自分の命が永遠に伝わっていくことを信じられてこそ、「もういちど生まれ変わってまいります」「もういちど出直してまいります」という言葉を残して安らかに別れを告げることができるのではないでしょうか。

 お釈迦さまは、こんなお言葉を残しておられます。

 過ぎ去れるを 追うことなかれ。
 いまだ来たらざるを (ねが)うことなかれ。
 過去、そはすでに 捨てられたり。
 未来、そはいまだ (いた)らざるなり。

 されば、ただ現在するところのものを、
 そのところにおいて よく観察すべし。
 揺らぐことなく、動ずることなく、
 そを見きわめ、そを実践すべし。

 ただ今日まさに()すべきことを 熱心になせ。
 たれか明日 死のあることを知らんや。
 まことに、かの死の大軍と、
 ()わずというは、あることなし。

 よく、かくのごとく見きわめたるものは、
 心をこめ、昼夜おこたることなく 実践せん。
 かくのごときを、一夜賢者といい、
 また、心しずまれる者とはいうなり。


   「中部経典『一夜賢者経』増谷文雄・訳」     』

   『人生、心がけ』庭野日敬 著 より








































































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