泥棒を導いた神父さん   庭野日敬  (1998年、平成10年)

 尻枝正行(しりえだまさゆき)神父は、バチカンの教皇さまのお近くで大事なお役をされている神父さんですが、その尻枝さんが神父になる決意をされたときの話をうかがったことがありました。

 日本が太平洋戦争に敗れた直後のことです。尻枝さんのお父さんは戦死され、家も焼かれて、一家四人、その日その日をどう生き延びるか必死の毎日でした。そんなある日、当時、中学生だった尻枝さんは、近くで建設中の教会から(くぎ)を持ち出そうと忍び込んだのだそうです。

 そこを運悪く外国人の神父さんに見つかってしまった。神父さんの大きな腕が尻枝さんの手をむんずとつかんだのですが、そのおおきな腕が、尻枝さんの背負っていたリュックを開いて、リュックいっぱいに釘を詰めてくれたのです。そして、「足りなかったら、またいらっしゃい」と神父さんは、尻枝さんを門から送り出してくださったのです。

 その晩、尻枝さんは一睡もせずに考えぬき、「あの神父さんのようになりたい」と決心されたのだというお話でした。

 人は教えをすべて知って信仰に入るのではなく、教えのとおりに行じている人の姿に導かれて信仰に入るのです。
  
人生の応援歌

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