鬼を仏に変える   庭野日敬  (1998年、平成10年)

 税所敦子(さいしょあつこ)さんという明治の女流歌人がいました。

才知と詩才を兼ね備えた人で、掌侍(しょうじ)として昭憲皇太后(しょうけんこうたいごう)にお仕えした方ですが、夫と子どもに先立たれて、お(しゅうとめ)さんと二人きりで暮らすことになりました。

ところがそのお姑さんが鬼といわれる怖い人で、もう事あるごとに嫁いびりをするのです。

 ある日、そのお姑さんが、「あんた、歌人ならこれで歌を作ってみよ」と言って「鬼(ばば)ァと人はいうらん」という難題を敦子さんに与えました。

 敦子さんはそれに、「仏にも似たる心と知らずして」と(かみ)の句をつけたのです。

 「仏にも似たる心と知らずして鬼(ばば)ァと人はいうらん」・・・・・・・・・

敦子さんが()んだその歌を見て、お姑さんは涙が止まらなくなってしまいました。

 「すまなんだ。すまなんだ」と繰り返し、それからは、もう敦子さんなしでは夜も日も明けぬ毎日で、最期は、敦子さんの(ひざ)に頭をのせて安らかに息を引き取られたといいます。

 清水寺(きよみずでら)大西良慶(おおにしりょうけい)師からうかがった話ですが、人はこちらの見方で鬼にも仏にもなります。

 人を仏にする見方、それが仏さまの見方です。
人生の応援歌

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