困難の向こうに    庭野日敬  (1987年、昭和62年)

 私が母を亡くしたのは、十七歳のときでした。田植えの真っ最中で、春蚕(はるご)があがるいちばん忙しいときに、母の看病で父が仕事に出られない。しかも、兄も兵隊にとられて入隊してしまい、家の仕事がいっぺんに私にかかってきたのです。

 それまでは、父と兄のあとについて手伝っていればよかったのが、全部自分で段取りをつけ、自分一人でやらなくてはならなくなって、とても自分の肩には背負いきれない、と途方に暮れることもありました。しかし、その苦労のお陰で、どんな骨の折れることも平気になったのでした。

 体の障害を持った青年の、こんな言葉を聞いたことがあります。「人は体の不自由なことや、父母を早く亡くしたことを不幸だと思っているけれども、不幸というのは、そういう条件に甘えて、ちょっとつらいことにぶつかっただけで、すぐ逃げだしてしまうことだ」と。

 会社の経営でも国の経営でも同じなのですね。いま直面している困難をまわりのせいにして甘えず、このつらいところを乗りきることで、さらに自分の力がついてくるのだと踏ん張ると、洋々たる前途が開けてきます。 
人生の応援歌

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